「ブレーカーがよく飛ぶんだよね」
親族の家に行ったとき、こう相談されたことがあります。古い家屋で、そもそも契約アンペア数が足りていない。エアコンと電子レンジを同時に使うと落ちる、みたいな状態でした。
私は第一種電気工事士を持っています。電気工事会社に10年勤めて、最後は現場代理人までやりました。だから「じゃあ俺がやるよ」と言えたら、話は早かったと思います。
でも、言いませんでした。
資格を持っているからこそ、これは自分がやる仕事じゃないと分かったからです。
結局その家のブレーカーの問題は、今も解決していないかもしれません。この記事は、そういう話から始まります。
資格を持っているからこそ、やらなかった
理由は3つありました。
1. 道具がない
電気工事の道具は、会社の持ち物です。独立して電気工事をやっているわけではない私の手元には、必要な工具が揃っていません。
電気工事って、ペンチとドライバーがあればできる、みたいなものではないんです。圧着工具、ケーブルストリッパー、テスター、絶縁抵抗計。分電盤をいじるなら、それなりの装備が要る。しかもそれぞれが安いものではありません。
「資格を持っている」ことと「工事ができる状態にある」ことは、まったく別の話でした。
2. 一人ではできない
これは現場をやったことがある人なら当たり前の感覚だと思うんですが、電気工事は基本的に2人以上でやるものです。
安全確認、通線作業、脚立での作業。誰かがブレーカーを触っている間に、誰かが別の場所で作業している。片方が「切ったぞ」と言って、もう片方が「確認した」と返す。この積み重ねで事故を防いでいます。
一人でやると、その確認が全部自己申告になる。プロがやっても危ないんです。
3. 会社に頼むと高くなる
当時所属していた会社に依頼することも考えました。でも、やめました。
会社を通すと、当然ながら会社の見積もりになります。親族の家のブレーカー増設という規模の仕事に対して、それなりの金額が乗ってくる。個人的な事情で社内に無理を言うのも違うなと思いました。
結果、私は何もできませんでした。
じゃあ、素人はどこまでやっていいのか
ここは誤解している人がとても多いところなので、はっきり書きます。
電気工事は、DIYではありません。
ホームセンターに材料が売っているので「買えるってことは自分でやっていいんだろう」と思われがちですが、電気工事士法という法律があって、資格のない人がやると違法になる作業があります。
資格がなくてもできること
- 電球や蛍光灯の交換
- 電源プラグを挿すだけの機器の設置
- 延長コードの使用
資格が必要なこと
- コンセントの増設
- スイッチの交換
- 屋内配線の工事
- 分電盤・ブレーカーまわりの作業
- エアコンの取り付け(電源工事を伴う場合)
「コンセントを一つ増やすだけ」も資格が要ります。壁の中の配線に触れる作業は、原則すべて電気工事士の領域だと思ってください。
私が自分でやった例
ちなみに、私が実際に自分の手でやったこともあります。実家に防犯カメラを付けたときです。
これは既存の屋外コンセントから電源を取るプラグタイプのカメラで、やったのはケーブルを壁や軒下に這わせて固定する作業と、親の希望する位置・カメラが有効に働く位置への取り付けだけ。壁の中の配線には一切触れていません。
これなら資格は要りません。DIYの範囲です。
第一種電気工事士なので、法律上は住宅の配線工事もブレーカーの交換も私にはできます。それでも自宅や実家で自分の手を動かすのは、この防犯カメラのような資格の要らない範囲までです。理由は最初に書いた通りで、道具と人手がないから。
資格があるかどうかと、実際に手を出していいかどうかは、別の話なんです。
ブレーカーは「落ちないほうが危ない」ことがある
これは一般の方にぜひ知っておいてほしい話です。
多くの人は、ブレーカーについてこう思っています。
落ちる = 何か問題がある 落ちない = 問題ない
でも、違うんです。
ブレーカーの選定を間違えると、容量に達しているのに落ちないという状態が起こり得ます。そうなると何が起きるか。ケーブルが熱を持ちます。
ブレーカーというのは、電気を使いすぎたときに回路を遮断して、ケーブルが燃えるのを防ぐための装置です。その遮断が働かないまま電気が流れ続けると、守るものがない状態で電線に負荷がかかり続けることになります。
だから、素人判断で「よく落ちるから大きいブレーカーに替えよう」というのは、絶対にやってはいけません。それは安全装置を外しているのと同じです。
あわせて、回路数も見なければいけません。一つの回路にどれだけの負荷がぶら下がっているのか。ブレーカーの容量だけ見て判断できる話ではないんです。
放置してはいけないサイン
現場を10年やってきた感覚で、「これが出たらすぐ人を呼んでほしい」というものを挙げます。
焦げ臭いにおいがする
これは最優先です。どこかで異常な発熱が起きているということなので、火災の一歩手前と思ってください。
異音がする
コンセントやブレーカーから「ジー」「バチッ」といった音がする場合、接触不良や漏電の可能性があります。
ブレーカーが頻繁に落ちる
落ちること自体は安全装置が正常に働いている証拠なんですが、頻繁に落ちるのは容量が足りていないか、どこかに異常があるということ。冒頭の親族の家がまさにこれでした。
一つのコンセントからタコ足配線になっている
これは今すぐ壊れるわけではありませんが、私が家に行って目にすると「工事が必要だな」と思う光景です。
延長タップに延長タップを繋いで、そこに大きな家電がぶら下がっている。そもそも、その部屋にコンセントが足りていないということなので、タコ足で凌ぐのではなく増設したほうがいい。
プロが見ている「信用できる業者」の見分け方
現場代理人をやっていた頃、下請けの電気屋さんに工事をお願いすることが何度もありました。
そのときに何を見ていたかというと、迷いなく作業しているかどうかです。
これは本当に見ればわかります。その工事を普段からやっている人と、そうでない人では、手の動きも、段取りも、進捗もまったく違う。慣れている人は次の手が決まっているので、動きが止まりません。
逆に、やたらと道具を探していたり、手が止まる時間が長かったり、段取りを何度も組み直していたりする人は、その工事に慣れていない可能性が高い。
一般の方が業者を呼ぶとき、工事の技術的な良し悪しを判断するのは難しいと思います。でも「迷いがあるかどうか」なら、素人目にも見えます。作業を見ていて不安を感じたら、その感覚はだいたい当たっています。
結局、私も「頼める業者」を持っていない
そして、これが一番正直な話なんですが。
友人や知人から、電気のことで相談を受けることは今でもあります。
- ガレージにコンセントを増設したい
- エアコン用のコンセントとブレーカーを増設したい
- ガレージに換気扇を付けたい
こういう相談です。
私はそのたびに、アドバイスだけをしています。「それは資格が要るよ」「その工事なら回路を分けたほうがいい」といった話はできる。
でも、「この業者に頼めばいいよ」と紹介できたことは一度もありません。
なぜかというと、地元に知っている電気工事屋さんがいないからです。私が勤めていたのは別の地域の会社でしたし、独立してからは電気工事の世界から離れています。
実家の屋根の上に、使わなくなった古いアンテナがずっと残っていたことがありました。あれを撤去してもらったときは、たまたま知り合いの工事屋さんにお願いできた。でも、それは運が良かっただけです。
第一種電気工事士を持っていて、施工管理をやって、現場代理人まで務めた人間が、いざ身内の家で困ったときに、頼める人を知らない。
これが現実です。
だから、探す手段が要る
ここまで読んでいただいた方には、たぶん伝わったと思います。
電気のトラブルは自分で直せません。資格を持っていても、道具と人手がなければ動けない。そして、頼める業者を個人的なツテで見つけるのは、プロでも難しい。
だとすれば、一般の方が自力で良い業者を探すのは、もっと難しいはずです。
そういうときに、電気工事を専門に扱っている業者へWEBから相談できるサービスがあります。
出張費と見積もりが無料で、コンセントの増設、漏電の調査、インターホンの設置、防犯カメラ、アンテナ工事など、家庭の電気まわりを幅広く扱っています。
私自身が使ったわけではないので、「使ってみたら良かった」とは書けません。そこは正直に書いておきます。
ただ、この記事で挙げたような症状 — 焦げ臭い、異音、ブレーカーが頻繁に落ちる、タコ足配線が常態化している — に心当たりがあるなら、放置する理由はどこにもありません。見積もりを取るところまでは無料でできます。
※WEBからの申し込みが対象になります。
最後に
冒頭に書いた親族の家のブレーカーの件。
あれから、どうなったのか。私は正直、把握していません。誰かに頼んだという話も聞いていないので、たぶん今も同じ状態のままです。
何が問題なのかは伝えました。どう直すべきかも話しました。それでも、実際に業者へ連絡するかどうかは本人が決めることです。
プロが身近にいても、動かなければ何も変わらない。
もし読んでくださっている方の家で、ブレーカーがよく落ちるとか、コンセントが焦げ臭いとか、そういうことがあるなら。「そのうちなんとかしよう」と思っているうちは、たぶん何も変わりません。私の親族の家がそうであるように。
見積もりだけでも取ってみてください。それだけで、何が問題なのかは見えてきます。


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